マルタの自然と世界遺産をめぐる旅
マルタ3日目、灼熱の太陽が照りつける中、荒野のような道を進む。ルソーがその著作「エミール」の中で、「必要とあらばアイスランドの氷の中であろうと、マルタ島の焼け爛れる岩壁の上であろうと生き抜くことを彼に教えなければならない」と言及していることに裏付けられるように、マルタの人々が置かれている生活環境がいかに苛酷だったことが想像できる。
紀元前4000年頃、シチリアから渡来した民族がマルタに巨石神殿を多数建築した。私は数ある建築物の中から紀元前2700年頃建築されたハジャーイム神殿と、紀元前3600年頃建築されたイムナイドラ神殿を見に行くことにした。
しばらく車で走ると、高台に近代的な建物と広い駐車場が見えてくる。ハジャーイム神殿の説明のための展示館だ。何度も来ているという次女の夫の両親をカフェに残し、神殿観光コースに出発した。
展示室を抜けてから神殿まではかなりの距離があった。灼熱の太陽が岩壁に照りつけ、湿度はないが強く暑い日差しがじりじりと肌を焼く。やっとの思いで神殿の入り口にたどりつくと、「今日は涼しいでしょ?」と門番の男が声をかけてきた。その言葉にマルタの夏が、聞いていたよりもずっと暑いことを痛感した。
ハジャーイム神殿の中に入ると、すーっと涼しくなった。建物の影で地中海の心地よい風を感じる。気持ちがいい。太古のマルタ人も、この涼しい神殿で熱さを凌いだのだろう。歴史書は巨石神殿文明は紀元前1800年頃忽然と消滅したと書かれているが、民族の文化レベルは高かったようだ。
イムナイドラ神殿は、ハジャーイム神殿から数百メートルの石畳の小道を下ったところあった。かなりの暑さと坂道に逡巡しながらも果敢にイムナイドラ神殿に向かった。マルタの自然と世界遺産をめぐる旅は、言い換えればマルタの過酷な自然を痛感する旅とも言えるかもしれない。
本日のメイン。ウィド・イズッリーと青の洞窟へ
マルタの西海岸は険しい断崖が続く。
絶壁から海まで下り坂になっている場所もある。その1つがウィド・イズッリーだ。遥か下方に真っ青な海と青の洞窟(ブルーグロッタ)へ向かう舟が出る船着場が見えた。
船着場へ着くと、入り江は観光地らしくレストランや土産物の店があり、観光客がたくさん集まっていた。幸い待たずに舟に乗ることができた。8人乗りのルッツ。エンジンの音は軽やかに波を切って走る。
ライフジャケットを着込んだ怖がりの私は道程の断崖にかなりナーバスになったが、どこまでも透明の碧い碧い海。太陽の光を取り込んで煌く水面、映し出す神秘的な影。洞窟に近づくにつれ、その光景のあまりの美しさに、怖さも忘れてしまった。
美しく、そして厳しい自然の中で真摯に生き抜くマルタの人々の魂に触れた1日。是非ともご覧頂きたいおすすめの場所です。
(次回につづく)
追記:伊東さんからコメントいただいた、「マルタの鷹(主演ハンフリーボガード)」をDVDで観ました。アメリカが舞台で映画の中にマルタは出てきませんでしたが、スペイン王カール2世からマルタを譲り受けた騎士団が、年に一度鷹を献上するくだりは、マルタにちなんだものでした。
伊東さん、情報ありがとうございました。また、コメントお待ちしております。
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